小林標『ラテン語の世界』 [日常読んだ本]
基本的には、ラテン語という言語自体に注目しての、その造語力の豊かさや現代のフランス語やイタリア語などのロマンス諸語への流れの解説、そしてラテン語で書かれた文学についての解説という二部から、きちんと分けられたわけではないけれども、なる。ラテン語という言葉がどういう性質・経歴を持つのかを手っ取り早く知ることができ、しかもそれは、より深く知る際の手がかりになる。
感想としては、ラテン語、京都大学、筆者はすごいんだ、ということ。言語には優劣はない、としながらも、形式と意味との論理的関連性に優れたラテン語をひたすら持ち上げ、東京帝国大学に招かれたケーベル博士の伝統を受け継ぎ、古典学の中心であり続けてきた京都大学を持ち上げ、そこでラテン語を学んだ筆者はすごい、みたいなイメージ。ケーベル博士は東京帝大に招かれたのに、なぜ伝統を継いだのは京大だったのかは素朴に疑問。前に東大と京大の古典学は仲が悪いとか聞いた気もしますが、大人の事情が見え隠れしていそうなので、深入りは無用。上から目線な感じが引っかからないわけではないけれども、ラテン語自体にも、その文学にも気が配ってある本はそうないので、総合的にはいい本、ということで。
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