岡田暁生『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』 [日常読んだ本]
まえがきによれば本書の目的は「西洋芸術音楽の歴史」を「川の物語として語ること」である。この音楽は誰がいつ作曲して…というものではなくて、大きな流れのなかで作曲家や作品がいかに位置づけられるか、そもそもその流れがどのようなものかを明らかにすることに主眼が置かれている。
私自身は、クラシックの知識といえば学校での音楽のものしかないので、割合と新鮮にさくっと読み通した。自分のもっている世界史の知識と聞いたことのある音楽が結びついていくのは爽快。点としての音楽が、思想的・時代的な背景を持つこと(あるいは「もたない」こと)を痛感させられる。
ベートーヴェンの第九交響曲「合唱」については、どこかで聞いたことはあったものの、「音楽の万人への解放」という理念と「集団へ熱狂的に没入する快感」が紙一重であることが指摘されている。筆者曰く、「エイエイオー」調であるこの第四楽章は、この国では年末の風物詩である。「みんなのもの」としての第九と「熱狂」の第九、その深さと浅さに、今度聞くときは思いを馳せてみようかと思う。
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