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パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』 [日常読んだ本]

反社会学講座 (ちくま文庫 ま 33-1)

反社会学講座 (ちくま文庫 ま 33-1)

  • 作者: パオロ・マッツァリーノ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 文庫


 この本が単行本で出たとき,買おうかと書店で悩んだ記憶がある.当時は,もうちょっと固めな本がブームだったので結局買わなかったのですが,先日本屋に行ったところ,文庫になってるじゃありませんか!精神的にもいっぱいいっぱいななかでお固い本なんて読んでられるか!という今日この頃なので,即購入.で,読んでみました.

 感想としては,『反社会学講座』なんだけど,筆者自身も書いてるように,社会学っていう学問がどんなもものの考え方をするのかを端的に教えてくれる,社会学の面白い入門書だなあといったところ.「近頃の若者はキレやすくて,フリーター」とか,「少子化が国を滅ぼす」とかそういう社会学的な議論(というより,マスコミとマスコミに媚を売る社会学者の議論)を統計を用いて茶化すその語り口は近著『つっこみ力』と同様に軽快そのものです.

 ただ,社会学を専攻した私は非常に楽しく読めたんだけど,気になるのは,社会学という学問がそもそもどれだけの人になじみがあるのかという点.この本にしても,『つっこみ力』もそうなんだけど,結構筆者は社会学っていう学問が一般に知られていて,頼りにされているっていうことを前提にしているように思えます.(そして,「だけど,それって…」という形で〈社会学的〉に議論を展開していくことになる.)確かに,例えば筆者が取りあげるパラサイト・シングルや,今話題の格差の背後にいる学者の一人は山田昌弘という社会学者だし,一昔前のブルセラ論争といえば宮台真司という社会学者ですが,果たしてその問題に火をつけたのが誰かを知っている人は少ないだろうし,その個人名を知っていても彼らは報道ステーションとかで最近見る人とか,ラジオに出てなんだかいろいろ言ってる人とか,そんな印象しかないんじゃないかと思う.社会人になって,大学では社会学やってましたとかいっても,それって何ですか?ということになることがほとんどですし.(そういえば,アメリカでは違うみたいですね.全米で相当人気のあるらしいテレビドラマ,アメリカABC製作の「デスパレートな妻たち」に登場するベビーシッターは社会学部卒,と劇中で設定されていました.社会学ってこんな学問,というイメージはほとんど無いに等しい日本のドラマでは,登場人物の設定を社会学を専攻していたなんてすることは考えられないでしょう.)

 で,結局何がいいたいかといえば,『反社会学講座』というタイトルを付けたことで,ほんとはもっといろんな人が読んで「なるほどー」と思えた本なのに,社会学になじみがある一部の人にしか手を伸ばしてもらえないんじゃないかなあということ.非常に余計なお世話なんだけど,この本の〈社会学的〉なものの見方とは,社会学に限定されるものじゃなくて,広く一般に通じるものの見方なので,むしろ,社会学なんてどうでもいいという人が読んだらもっと面白く感じると思いますね.季節柄,筆者が茶化す読書感想文の課題として,この本をお読みになることを中学生の皆さんにお薦めします.そして,9月には一回り大きくなって,頭の悪い先生の説教に反論してあげて下さい.立派な社会学者の卵の誕生です.


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